『金田久美子 苦しんだスランプからのスイング改造を語る!』

金田久美子インタビュー(前編)

2022年シーズンの樋口久子 三菱電機レディスで、ツアー史上最長ブランクでの優勝を遂げた金田久美子。かつて「天才少女」として名を馳せたその復活劇は、どうやって実現できたのか。今回、彼女を直撃し、スランプに陥った時期を振り返ってもらいつつ、復活までの道のりについて語ってもらった――。

昨季、11年ぶりにツアー優勝を飾った金田久美子

――2022年シーズンでは、樋口久子 三菱電機レディスで11年189日ぶりのツアー優勝を果たして話題となりました。2位と3打差のトップに立って迎える最終日前日の夜は、平常心で過ごすことができましたか。

「夜は緊張しちゃうと思ったから、インターネットとかで自分の情報やニュースなどを見ないようにして、すぐに寝るようにしました。ふだんから試合の時は、眠れない時でもとりあえず目をつぶるようにしているんですけど、あの日も結局、寝たのか、寝られなかったのか、わからない状態でした」

――迎えた最終日、プレー中はいかがでしたか。

「最初から緊張はしましたけど、地に足がついている感じはしていました」

――メンタルコントロールができていたのでしょうか。

「そういうのはないですけど、"ここ一番"という時に『ここまで、自分はこれだけのことをやってきたんだから』と、言い聞かせた場面はいくつかありましたね」

――どの辺りで優勝を確信しましたか。

「(最終ホールの)18番のセカンドを打って、グリーンの左に乗った時に『ああ、勝てるかもしれない』と思いました。(後続とは)ずっと2打差があったので、多少は気持ち的にラクな部分があったんですけど、それでも18番のセカンドを打つまでは『まだわからない』と思っていましたね。

 私自身、緊張していると思ったし、2打差があっても最終(18番)のロングホールでは(2位の)川﨑春花ちゃんは2オンできるので、イーグルをとる可能性だってありました。そうなれば、追いつかれてしまうし、まだまだわからないという緊張感がありました」

――最終的にはその川﨑選手を振りきって、11年ぶりの優勝を決めました。改めて振り返ってみて、ご自身で何がよかったと思われますか。

「(ここまで)諦めずにやってこられたことがよかったんでしょうね(笑)。

 2022年シーズンは、上位争いを演じることが何度かあったり、結構いいゴルフができるようになってきてはいました。それで、樋口久子 三菱電機レディスは4月のステップ・アップ・ツアー(Hanasaka Ladies Yanmar/3位タイ)と6月のアース・モンダミンカップ(7位タイ)に続いて、シーズン3回目の最終日最終組でのラウンドでした。そこで勝つことができたのは、過去2回のリベンジへの思いもあったかもしれないですけど、でもやっぱり、(調子が)悪かった時でも諦めずに(ゴルフを)やり続けてきたことが、(勝利に)つながったのかなと思います」

――「諦めずにやり続けた」という、そのモチベーションは何だったのでしょうか。

「一番は『このまま終わりたくない』っていうか、"ダサい自分"のままで終わりたくなかったというのがあった。また、(成績が)悪かった時もずっと応援してくれていた人もたくさんいたので、そういう支えてくれた人たちに『結果で恩返ししなければ』というか、『いい報告をしたい』と思っていたし......なんか、(いろんな思いが)たくさんありますね。

 あと、お父さんには、元気なうちに2勝目を見せたいと思っていたし。それに、私って(周囲から)叩かれるというか、『ろくに練習をしていない』とか、いろいろと言われることが多いから、そういう声に対して、見返してやりたいという気持ちもありました」


――"ダサい自分"というのは、どういったところですか。

「やっぱり成績も出せていないし、自分の思い描いていた理想のゴルファーに全然なれていなかったので。結果が出なくて、いいゴルフもできなくて悲観的になってしまって、そんな自分が『ダサいな』って思っていたから、このままで終わりたくなかったっていう感じです」

――自分が思い描いていた理想のゴルファーとは、どういったものだったのでしょうか。

「プロになってからはすぐにトントントンと勝って、25歳ぐらいの時にはたくさん稼いでいて、結婚して、子どもを産んでとか(笑)。でも、25歳を過ぎても全然うまくいかなくて、結果も出ていないから『納得するまでやりたい』というのがあって、その後も(ゴルフを)続けていて......」

――最近の若い選手のなかにも『30歳で引退する』と言っている選手が結構います。

「私も、25歳の時点で納得がいかなかったから、30歳までには(自分で納得できる成績を残して)結婚して子どもを産んで、と思っていたけれど、結局30歳を過ぎても納得できなくて......。今もその状況が続いています(苦笑)」

――ご自身で納得できる成果を残せない限り、すべてにおいてゴルフが最優先になる、ということでしょうか。

「はい、もちろん。みんなはそう思っていないかもしれないですけど、私の人生においては(自分のなかで)ゴルフが一番大きく占めていると思っています」

――今は何歳ぐらいまで現役生活を続けていこうと思っていますか。

「もう、そういうのは決めないことにしました。決めてもそうならなかったし、どうせ(その年齢で)やめないでしょうから」

――こういうふうになりたいといった目標のプロゴルファーがいますか。

「う~ん......、ずっとタイガー(・ウッズ)に憧れていて『タイガーみたいになりたい』って思っていて。あと、藍ちゃん。宮里藍さんのことはすごく尊敬しています。

 今は(上田)桃子さんとか、あの年齢で常に上位で戦うことができていて、とてもカッコいいなと思っています。桃子さんが『年齢なんて関係ないんだよ』というのを、見せてくれているように思っています」

――ご自身もそういうプレーヤーになりたいと。

「そうですね。そう思っています」

――ところで、11年ぶりの優勝を遂げた2022年シーズンですが、これまでとは何か違うことに取り組んだりしたのでしょうか。

「特にないんですけど......。強いて言うなら、シーズン中でも毎週月曜日にトレーニングを行なうようになったことかな。それまで、週明けのトレーニングは(試合のあとで)疲れていてなかなかできなかったんですけど、昨年は月曜日には必ず(地元の)名古屋に帰って、トレーニングをしてきました」

――そのトレーニングではどんなことをやっているのですか。

「4年くらい前から腰痛で苦しんでいて、数年前から(それによって)出られない試合も結構あって。それで、それまではパワーアップとか、飛距離アップのためのトレーニングをやってきたんですけど、昨年からは腰痛予防のトレーニングに変えて、それをこなしてきました。

 以前は、バーベルを持って上半身のトレーニングとかもやっていたんですけど、今は上半身を鍛えることはほとんどやっていなくて、腰痛予防のための体幹トレーニングが中心。腹圧を上げる腹筋とかをメインにやっています」

――パワーアップからコンディショニング重視のトレーニングに変えたことがよかったわけですね。

「はい、そう思います。2022年シーズンは大きなケガもなくやれたので。

 実は、腰痛は2020年ぐらいがピークで、メチャクチャ痛くて『いつまでゴルフができるのかな』と思ってしまうぐらいの状態でした。それに比べると、2022年はすごく状態がよかった。腰はまだ痛いには痛いんですけど、ゴルフができているので、当時とは全然違いますね」

――30歳を越えて、年齢を感じることはありますか。

「まあ、はい、ありますね。連戦になると、疲れちゃいますから。以前は、試合が終わったあとでも、ご飯を食べに行ったり、何かできたんですけど、今はもうしないですね。試合が終わったら、とりあえず家に帰って寝る。翌日の月曜日にはトレーニングをして、ご飯を食べて寝て......ではないけど、とにかく試合後の疲れ方が若い頃とは違う気がします」

――今後もツアー生活を長く続けていくためには、何が重要になりますか。

「よく寝て、よく食べることじゃないですか」

――このオフは、どういった点を強化していこうと思っていますか。

「やっぱり体(の強化)、かなぁ~。下半身をもっと強くしたいし、上半身ももっと強くなりたい......って、なんか子どもみたいなこと言ってますね(笑)。でもほんと、体幹も強化したいし、メンタルも強くなりたいし。

 なかでも一番は、下半身ですかね。もっとしっかりさせたいです。(試合中)グラグラしちゃう時がまだあるので。とにかく、一年間を通して変わらない体を作っていきたいと思います」

(つづく)

金田久美子(かねだ・くみこ)

1989年8月14日生まれ。愛知県出身。身長166㎝。血液型A。中学校1年生の時にはプロツアーで予選突破を果たし、その後も数多くのトーナメントでローアマを獲得。「天才少女」として名を馳せた。そして2009年シーズン、プロとしてツアー本格参戦。2011年シーズンにはフジサンケイレディスで念願のツアー初優勝を果たす。以降、勝利からは遠ざかっていたが、2022年シーズンに樋口久子 三菱電機レディスで11年ぶりに2度目の優勝を飾る。若手選手が躍動する女子ツアーだが、完全復活を遂げた今、2023年シーズンでの活躍が大いに期待される。


連載

トッププロレッスン K's STUDIO

K's STUDIO|金田久美子 苦しんだスランプからのスイング改造を語る!

深堀圭一郎がトッププロをゲストに招き、その素顔とテクニックに迫るトーク&レッスン番組『トッププロレッスン K's STUDIO』。第11シリーズのゲストは金田久美子(撮影日:2022年12月6日)



まさかの怪我の功名?腰痛がハーフショットを上手くした?スイングの不調に悩んだ金田久美子プロがライン出しを武器にするまでに至った壮絶な経緯を赤裸々に語る!さらにスイング改造の結果たどり着いたコントロール抜群のアイアンショットを実践レッスン!
ゲストプロ・金田久美子|1989年8月14日生まれ。愛知県名古屋市出身。3歳でクラブを握ると、8歳で「世界ジュニア選手権」を制するなど、“天才少女”の名を欲しいままにした。プロ転向までに15回のベストアマを獲得。その後はプロテストで不合格となるなど苦しんだ時期もあったが、2011年の『フジサンケイレディス』でツアー初優勝を挙げた。2022年「樋口久子 三菱電機レディス」で実に11年189日ぶりの2勝目を果たした。愛称はキンクミ。
番組ホスト・深堀圭一郎|1968年10月9日生まれ。東京都出身。1992年のプロ転向。03年「日本オープン」では、最終日に5打差を逆転して優勝し、自身初の日本タイトルを獲得。05年にはシーズン2勝を挙げて、賞金ランキングは自身最上位の3位に入った。現在はシニアツアーをメインに参戦しており、2022年コマツ・オープンでシニア2勝目を挙げた。
(出典:https://www.alba.co.jp/)