『西村優菜』フォトギャラリー


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国内ツアーに多くの観客が入るなど、ようやくコロナ禍からの脱却の兆しが見えた2022年。海外に目を向ければLIVゴルフの誕生、PGAツアーとの争いなど様々なものごとがありました。そうして迎える23年はどんな年となるのでしょうか。そこで、ツアー取材担当が今年の気になるトピックをピックアップ。今回は西村優菜の米ツアー挑戦について。

ツアーカードを手にした選手だけが参加できるQシリーズの表彰式で、西村プロはただ一人浮かない顔をしていました。前半戦の多くに出場できる20位に、2打足らず24位タイで終わったからです。これにより米ツアーに参戦したとしても、リシャッフルまでの出場は限定的なものとなりました。

フル出場権のある日本ツアーに残れば、西村プロの力なら普通にやれば年間2勝はできるでしょう。「覚悟はしてきましたが、飛距離的な部分でしんどい戦いが毎日続きました。そのなかで何とかやろうとしましたが…」という米ツアーと比較して、日本のほうがコースもやりやすいでしょうし、言語も食事も慣れたもの。賞金で見れば今年の西村プロよりも稼いだ米ツアーの選手はわずかに22人。移動費などの持ち出しを考えれば、金銭的にも日本のほうが稼げるかもしれません。

それでも西村プロは異国の地で戦うことを選びました。「海外メジャー優勝へ何が一番成長できるか。向こうで経験したい、強くなりたい。1年間向こうで、と思ってQシリーズも受けたので、そこを捨てたらもったいない」。最大目標から逆算するならば向こうで戦うほうがいい。そう、判断しました。

この決断には本当に拍手を送りたいと思っています。前述の通り日本の普通が通用しない環境に身を置くという勇気と決断は、自分自身に置き換えたらできない気がしますから。

一方で“似たような背丈の古江彩佳プロが通用したから大丈夫”と短絡的に考えてはいけないとも思っています。古江さんの転戦のなかでの修正力、新しいコースでのマネジメント力、何事にも動じない胆力は素晴らしいものがありますし、何よりも米ツアーで戦うことを楽しむ力は群を抜いていたように思います。今年6試合取材しましたが、日本ツアー以上に“ゴルフが上手いだけではダメ”というトーナメントだということを非常に感じます。

ただ、西村プロには古江プロに負けずとも劣らない強い武器があります。それは負けん気です。

Qシリーズ最終日のラウンドを終えて、テレビインタビューの最初の質問で悔しさから涙を流した西村プロ。ですが、実は昨年西村プロの涙を見るのはこれが初めてではありませんでした。

取材中に泣かれるかもしれない。そういうときは大体想像がつくものですが、この時は突然でした。それは5月の「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」のこと。連覇を逃した談話を聞きに行ったときに、目を潤ませたのです。

私にとってみればまさかでした。優勝した山下美夢有プロとは12打差。大きく差がついており、連覇を逃したといってもある程度覚悟していると思ったからです。でも、西村プロから出てきた言葉は違いました。「ちょっとドライバーが怖くて、振れなくなってしまいました」。恐怖心からクラブを気持ちよく振れないことに悔しさを感じていたのです。正直、これから大丈夫かなと心配になりました。同じように苦しんできた選手を何人も見ていたからです。

ですが、西村プロは私の不安を吹き飛ばしてくれました。約1カ月後の6月の「全米女子オープン」では本来のプレーを見せてくれ、そして「あまり得意ではない」と話していた袖ヶ浦カンツリークラブ・新袖コースで行われた「ニチレイレディス」で優勝。さらに7月には「ニッポンハムレディス」で2勝目をマークしました。

これは一例ですが、アマチュア時代から見ていても西村プロは“悔しさを力に変えられる”選手だと思っています。成績につなげられると言い換えてもいいでしょう。これは思ったよりも大変なことです。悔しさを持ち続け、正しい努力をして克服する。強い気持ちが無ければできません。

だからこそ、今回のQシリーズの結果は西村プロがより飛躍するための1つなのかなと思っています。予選会はあくまでスタート地点。よく言われる話ですが、ゴルフ人生を振り返った時に「あの経験があったから」と言えるような活躍に期待したいです。
(文・秋田義和)