谷原秀人「まさか自分が。俺でいいのか」 
44歳逆転で今季2勝目「若手を痛めつけていきたい」


報知新聞社

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\\ 谷原秀人選手// ㊗️優勝⛳️🏆 第49回 2023 ANAオープン 優勝者は谷原秀人選手となりました🎊 誠におめでとうございます🥳 #ANAOPEN #谷原秀人 #第49回ANAオープン王者 pic.twitter.com/gJdHVnacBx

(出典 @ANA_travel_info)

選手会長なのにLIV参戦? 谷原秀人が批判に答えた/単独インタビュー

日本男子ツアーは年が明けて、3カ月以上に及ぶオフの真っ最中。海外ツアーで始動する選手がいる一方で、4月の開幕戦「東建ホームメイトカップ」を待つメンバーも多い。去る2022年、最終戦「日本シリーズJTカップ」を連覇した谷原秀人は、ジャパンゴルフツアー選手会の会長に就任した一方で、サウジアラビア政府系資金を背景にした「LIVゴルフ」にも参戦。44歳の動向は一部で物議を醸した。渦中の今、何を思うのか聞いた。

実感なき連覇

カップに収まらなければ、きっと負ける。シビアな2mのパーパットを前にしても、手はしびれなかった。昨年12月の「日本シリーズJTカップ」最終日、後続を1打リードして迎えた最終18番。谷原は名物パー3の急傾斜で下りのフックラインを残していた。

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「入らなかった瞬間にプレーオフにも行けないと思ったけれど、腹をくくれていた。『カップいくつ分、曲がる』とかではなく、ただラインをイメージできた。(直前に打った岩田)寛のアプローチも参考になって。『大丈夫だ』と思えたから、全然緊張しなかった」

打ち出したボールはカップに消えた。ガッツポーズ姿にテレビ解説の丸山茂樹は思わず「天才」と感嘆。ただそのウィニングパットにも、健在の勝負強さにも、ベテランは「あまり勝った実感がない」と静かに振り返る。

LIVには5試合出場

22年は谷原にとって激動のシーズンと言えた。選手会長として国内ツアーに18試合(全26試合)に出場、そしてLIV招待には開幕戦のロンドンから5試合(全8試合)に参戦した。世界の男子ゴルフ界をかき回す存在になった新リーグ。「良いものがあれば、日本に持って帰りたい」と勇んで向かった世界には高額賞金だけではないモノがあったという。

グレッグ・ノーマン(オーストラリア)率いるLIVは巨額の契約金を投じ、世界のトップランカーを欧米ツアーから買い漁った事実がある。ただし、谷原自身が感じた“現場”の空気感は外野の想像とは少し違った。

「周りの人は(莫大な契約金で)『選手の欲がなくなる』なんて言うけれど、もともと戦っていた選手たちは、今も負けたくないと思う人ばかり。“ぬるま湯”というイメージは実際には全く感じられない。僕たちにしてみれば、もっと上に行きたい、どうしたらこの人たちに近づけるかと、この年齢になっても考えられる。非常に刺激になっている」

「LIVでトップ選手が何をして、何を悩んでいるかを見られた」ことが自身のキャリアにとって大きい。「トップ選手の調子が良い時も、悪い時もどちらも見られた。あれほどのメンツだから刺激にもなる。フィル・ミケルソンなんかの練習量は今もすごい。試合は午後0時のスタートなのに、朝7時半からショット、パットの練習をしていたりするんだ」

ショットガンスタートの課題

LIV招待は既存の4日間72ホールのストロークプレーを、予選落ちのない3日間54ホール競技に変えた。また、全選手を各ホールから一斉にティオフさせるショットガンスタートを採用することで、全体の競技時間を5時間弱に抑えた。

「(競技全体の)時間が短い中で、お客さんが喜んでくれるようにすることがモットー。短い時間で試合を終わらせて、その後のコンサートでも一緒に盛り上がろうといった、今までとは違うスタイル。いずれ、こうなっていった方が楽しいんだろうなとも思う。これまでとは違うお客さん、ゴルフに興味がない人も、“お祭り”だからコースに来るようになる。先に少しだけでもゴルフを見て、その後、コンサートを楽しめる。日本ツアーでも例えば(コースの)駐車場を使ってできないだろうかと提案したこともあった」

「ショットガンスタートはあまりにもトリッキーだったり、難しかったりするホールからはティオフさせない。割とスムーズにラウンドに入れるようなホールが(最初のホールに)選ばれる。パー3になることもあるが、めちゃくちゃ難しいパー4よりも、200のパー3の方がまだ良いと思うのがプロ。問題は(スタートホールまでの)移動。各ホールに行くまでに(カート等で)10分、15分とかかって、それからスタートまで5分、10分と待たなくてはならない。(クラブハウス前で)パッティング練習をして、すぐ隣のホールでスタートする通常の流れとは違う」

チーム戦の未来

時間短縮と同時にLIVが推し進めるのが、個人戦がメインのプロゴルフに団体戦の魅力をミックスさせること。フィールドにいる48人が12組に分かれ、個々のスコアを合わせたチーム戦を並行させて実施している。

「(LIVは)フランチャイズ化を考えているのもおもしろい。いずれ企業などがそれぞれのチームにお金を出して、そこを応援するというプラン、チームでユニフォームをそろえる構想もある。実際にはプレー中、最初からチーム戦をやっている意識は少なくて、ラウンドの最後の方に気になってくる。(第2戦では)日本人4人で組んで、最終日は稲森(佑貴)と一緒に回って3位に入れそうだったが、カルロス・オルティス(メキシコ)に20mくらいのパットを決められて4位。惜しかった」

「でも団体戦はダスティン・ジョンソンパトリック・リードたちのチーム(4エースズGC)が強すぎて、タイでの第6戦から、採用スコアのルールが変わった(※初日、2日目に各組上位2人のスコアを採用していたものを、上位3人に変更した)。LIVはその辺が柔軟。確かにその後の2試合は別のチームが優勝した」

試合後にはアンケートが

言うまでもなく、発足したての新リーグは手探り状態で船出したことがうかがえる。そこで谷原が痛感したのが、組織の柔軟性の高さだった。

「タイでのプロアマ戦はとにかく暑くて、しんどかった。すると次のサウジアラビアでは気温が高すぎるという理由で、カートでのプレーが認められた。本当に選手をリスペクトしてくれるというか、選手がやりやすいように(運営側が)常に考えて何かをやってくれている。選手は試合後に必ず『今回の試合はどうだったか』というアンケートに答えなければならない。コースセッティングは? ピンポジションは? ヤーデージブックのつくりは? コース内での食事は?といったものもある。そういったアンケートが選手だけでなく、キャディやマネジャーに対してもある。スマホにメールが来て、3分くらいで回答するだけ。常に情報収集をして、改善していこうとしている」

「規模の大きさが違うので、(同じやり方を)日本ツアーにそのまま持ってくることは難しい。でも、大会前のパーティにしても、LIVはとてもフランク。ツアーとスポンサーの付き合い方も、そうすると人気が出るかもしれない。日本らしい“しきたり”を大切にするばかりではなく、例えば会食も立食でやったりすれば、選手とスポンサー関係者が普段から付き合える関係性につながっていくかもしれない」

契約金の是非

PGAツアー、そして4大メジャーを頂点とした既存のピラミッドを、あたかも崩さんとするLIVゴルフは、それを実現する巨大な資金力、サウジアラビアという国家に対する欧米の一部の厳しい視線も相まって、参戦選手は多くの場面で批判にさらされた。ときに誹謗中傷の対象にもなったことについて、谷原は疑問を口にする。

「日本人選手に契約金はなかった」ことを前提に続けた。「選手が契約金をもらってプレーすることがなぜ悪いのか。タイガー・ウッズアーニー・エルスも大会側から契約金をもらって、いろんな国の試合に出ていた。それと一緒なのに、なぜかLIVの選手はたたかれている。しかもLIVは『LIV以外でプレーしてはダメ』とも言っていない」

「確かにメジャーは4日間で、72ホールをプレーする。でも『だから3日(間競技)はダメだ』と言うのは違うのでは。予選落ちがない試合は他でもある。ZOZOチャンピオンシップもないでしょう。あるいは、天候で54ホールの短縮競技になることもある。それで決着をつける試合がダメ、優勝に価値がないということはない。ゴルフ界全体を見ても、(ゴルフというスポーツを)短縮する流れはあって、日本でも9ホールのプレーでもいい(推奨する)ゴルフ場もある。女子は3日間の試合も多い。日本の下部ツアー(ABEMA)も3日間ですよね」

「おれってダメだな」

谷原は今季、前シーズン(2020-21年シーズン)の日本ツアー賞金ランキング上位者の資格でLIVゴルフに参戦した。2023年に出場できる可能性は限りなく低い。それでも「仮に賞金が今よりもずっと低くても、出たいと思う。日本ツアーと同じ賞金だとしても、彼らとプレーしたいと思える」と語る。

これまで日本、米国PGAツアー、アジア、欧州ツアーでメンバーシップを得た。「これだけ多くのツアーでメンバーになった選手はなかなかいないと思う」。そこにLIVが加わった。

「海外には刺激がある。『おれ、ダメだな。下手だな』って、いつまでも思っていたい。もう(2打目以降で)ロングアイアンばかり持つのも慣れた(笑)。ティショットで50yd置いていかれても『はいはい。そうだよね』って感じで。でも、LIVにいるトップ選手たちとは普通は回れない。LIVに行けば回れると思うから、出たいと考える。テレビで見たブライソン・デシャンボージェイソン・コクラック…。2人と一緒に回って驚いた。本当にすごく飛ぶ。そのときは“ワイパー”だったけど(※左右に大きく曲がるという意味)。海外では『オレってダメだな』と感じることも分かっているけれど、分かっていてもそう自分で思いたい。今もそれを求めている」

(出典:GDO)